「自由財産」とは何ですか?(現金99万円、預貯金20万円、保険解約返戻金、小規模企業共済)

経営者が個人の自己破産をした場合でも、全ての財産が処分されるわけではありません。以下のものは「自由財産」として経営者個人のお手元に残すことができます。

なお、例えば「預貯金20万円」を保有してもよい「基準時がいつか」というのは非常に重要です。基準時は「破産手続開始決定の時点」です。裁判所に破産申立をすると、(東京地方裁判所では翌週水曜の午後5時に)「破産手続開始決定」が出ます。(緊急案件の場合は破産申立当日の午後5時に出ます。)よって、その基準時に「破産者の個人名義口座の合計額が20万円」を超えないように、あらかじめ引き出しておく必要があります。基準時に20万円を超えていると、「全額」を破産財団に組み入れしなければならない可能性があります。
※「破産手続開始決定」について詳しくは、「「破産手続開始決定」とは何ですか?」と「「破産手続開始決定」の効果は何ですか?」をご参考ください。

専門的説明は『自由財産とは具体的に何ですか?』をご参照下さい。

小規模企業共済に加入していて、受け取れる共済金(解約手当金)が約300万円あります。99万円を超えた分は保有できないのでしょうか?

いえ、約300万円の全額を確保できます。制限はありません。小規模企業共済は小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度と言われる国の制度ですが、小規模企業共済の共済金受給権は(国税などの滞納処分を除いて)法律で差押えが禁止されています(差押禁止財産)。これは自己破産の場合も同様で、未解約の共済契約は「本来的自由財産」として、自己破産手続きで処分される財産から除外されます。

なるほど!そうなんですね。では破産申立前に解約して現金化しても大丈夫でしょうか?

いえ、それはダメなのです。そこは注意が必要です。あくまで「未解約」である必要があります。破産手続開始決定の前に解約して現金や預貯金にしてしまうと、通常の自由財産として上限99万円や20万円の制約が生じます。ですので、破産手続開始決定の後で解約手続きをしてください。

えっ!?それは知っておいてよかったです。危なかったです。

はい。ところで、「小規模企業共済(小共済)」と同じように制限なく確保できる他の制度として、「中小企業退職金共済(中退共)」や「建設業退職金共済(建退共)」があります。「小規模企業共済」は主に経営者・役員・個人事業主が対象で、「中小企業退職金共済」は従業員が対象という大きな違いがあります。また、「建設業退職金共済」は建設業事業者むけに国がつくった退職金制度です。

なるほど。あと、聞いたことがあるのですが、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の解約手当金はどうでしょうか?

それらは残念ながら差押禁止財産ではありません。「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は取引先の倒産による連鎖倒産や経営難を防ぐための国の共済制度で任意解約によって解約手当金が出ますが、「本来的自由財産」としては扱われません。

会社(法人)にも自由財産はありますか?(会社破産と自由財産)

いえ、会社(法人)に自由財産はありません。そもそも自由財産が認められるのは、破産法の目的である「破産者(自然人)の経済生活の継続と経済的再生を可能にする」ためのものです。つまり、会社(法人)は破産手続きによって法人格は消滅するため、「経済生活の継続と再生」は必要ないことから、自由財産を認める必要がないのです。

なるほど。では、最後に会社(法人)に残った会社資産は何に使ってもよいのですか?

  • ① 事務所の明渡し・撤去費用
  • ② 破産申立の弁護士費用・裁判所費用

については問題なく認められます。さらに、

  • ③ 雇用関係(正社員・非正規雇用社員・アルバイト・パートタイム)にある従業員の未払給料

も認められることがありますが、従業員数が多い場合は「未払賃金立替制度」を優先した方がよいこともあります。なお、請負や業務委託や一人親方などは雇用関係ではなく一般債権者となることから、認められません。さらに。

  • ④ 代表者など取締役や監査役の役員報酬

については認められないことが多いといえます。

それでも余った会社資産はどうなるのですか?

全て破産管財人に引き継がれて、管財人報酬や、財産債権への弁済や破産債権への配当に使われます。

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