個人破産の「免責」とはどのようなものですか?

免責制度の趣旨

免責とは、個人の破産者に対し、残余の債務について責任を免れさせることによって、破産者の経済的更生を図ろうとする制度である。

免責手続

免責許可の申立て

個人である債務者(破産者)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間に、裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる(破産法248条1項)。

※ 債務者が破産手続開始の申立てをしたときは、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなされる(破248条4項本文)。

申立ての方式

債務者(破産者)は、免責許可の申立てをする場合、書面でしなければならず(破規1条1項、74条1項)、かつ債権者名簿を提出しなければならない(破248条3項但書、破規74条3項)。ただし、破産手続開始の申立てと同時に免責許可の申立てがあったとみなされる場合は、破産手続開始の申立てに際して提出される債権者一覧表が債権者名簿とみなされる(破248条5項)。

意見申述期間及び免責審尋期日

裁判所は、免責許可の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、破産者につき免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者が裁判所に意見を述べることができる期間(「意見申述期間」)を定めなければならない(破251条1項)。裁判所は、この意見申述期間を定める決定をしたときは、その期間を公告し、破産管財人及び知れたる破産債権者に対してその期間を通知しなければならない(同条2項)。この期間は公告が効力を生じた日から起算して1か月以上でなければならない(同条3項)。

免責の審理

調査の方法

裁判所は、管財事件では、破産管財人に対して、免責不許可事由(破252条1項)の有無又は裁量免責の許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情(同条2項)についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができる(破250条1項)。破産者は、この破産管財人による調査に協力しなければならない(同条2項)。

意見申述の方法

破産債権者及び破産管財人は、意見申述期間内に免責許可の決定をすることの当否についての意見を述べることができる(破251条1項)。この意見申述は書面でしなければならず(破規76条1項)、破産法252条1項各号所定の事由に該当する具体的な事由を明らかにした上でしなければならない(同条2項)。

免責の裁判

裁判所は、免責許可の申立てを却下することができる場合を除き、免責不許可事由に該当する事実がない場合は、免責許可の決定をする(破252条1項)。しかし、免責不許可事由に該当する事実があった場合でも、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる(同条2項)。

裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に送達しなければならず、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に送達しなければならない(破252条3項前段)。また、免責不許可の決定をしたときは、直ちにその裁判書を破産者に送達しなければならない(同条4項)。上記裁判書の送達は、送達代用公告によることができない(同条3項後段、4項後段)。

免責不許可事由(破252条1項)

破産者が意図的に破産債権者を害する行為をしたとみなされる類型

破産法上の義務の履行を怠り、手続の進行を妨害する行為の類型

免責制度にかかわる政策的事由

裁量免責

免責不許可事由に該当する事実があった場合でも、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる(破252条2項)。

具体例には以下のような場合には免責許可が認められやすい傾向にある。

上記とは逆に、以下のような場合には、免責許可が認められない傾向にある。

免責許可決定の効力

免責許可決定の効力

免責許可の決定が確定すると、破産者は、破産手続による配当を除き破産債権についてその責任を免れる(破253条1項柱書本文)。

非免責債権(免責の効果が及ぶ範囲)

免責の効果は、別除権や財団債権には及ばないが、破産債権にはその全てに及ぶのが原則である。しかし、破産法は、政策的理由から一部の債権には免責の効果が及ばないものとしている。これを非免責債権という(破253条1項各号)。

免責の取消し

一旦免責許可の決定が確定した後でも、一定の事由が認められれば、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で免責取消しの決定をすることができる(破254条1項)。

免責に関する決定に対する不服申立て

不服申立てができる者

免責許可の申立てに関する裁判(免責許可・免責不許可)に対しては、利害関係を有する者が、即時抗告により不服申立てをすることができる(破252条5項、9条)。免責不許可の決定に対しては申立人である破産者が、免責許可の決定に対しては破産債権者及び破産管財人が、それぞれ不服申立てをすることができる。

不服申立ての方法

免責許可の申立てに関する裁判に対する不服申立ての手段は、即時抗告に限られる(破9条)。

条文

(免責許可の申立て)
第二百四十八条 個人である債務者(破産手続開始の決定後にあっては、破産者。第四項を除き、以下この節において同じ。)は、破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後一月を経過する日までの間に、破産裁判所に対し、免責許可の申立てをすることができる。
2 前項の債務者(以下この節において「債務者」という。)は、その責めに帰することができない事由により同項に規定する期間内に免責許可の申立てをすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、当該申立てをすることができる。
3 免責許可の申立てをするには、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
4 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。
5 前項本文の規定により免責許可の申立てをしたものとみなされたときは、第二十条第二項の債権者一覧表を第三項本文の債権者名簿とみなす。
6 債務者は、免責許可の申立てをしたときは、第二百十八条第一項の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない。
7 債務者は、次の各号に掲げる申立てをしたときは、第一項及び第二項の規定にかかわらず、当該各号に定める決定が確定した後でなければ、免責許可の申立てをすることができない。
一 第二百十八条第一項の申立て 当該申立ての棄却の決定
二 再生手続開始の申立て 当該申立ての棄却、再生手続廃止又は再生計画不認可の決定

(強制執行の禁止等)
第二百四十九条 免責許可の申立てがあり、かつ、第二百十六条第一項の規定による破産手続廃止の決定、第二百十七条第一項の規定による破産手続廃止の決定の確定又は第二百二十条第一項の規定による破産手続終結の決定があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分若しくは外国租税滞納処分若しくは破産債権を被担保債権とする一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売(以下この条において「破産債権に基づく強制執行等」という。)、破産債権に基づく財産開示手続若しくは第三者からの情報取得手続の申立て又は破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分(外国租税滞納処分を除く。)はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの並びに破産者について既にされている破産債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は中止する。
2 免責許可の決定が確定したときは、前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分並びに破産債権に基づく財産開示手続及び第三者からの情報取得手続は、その効力を失う。
3 第一項の場合において、次の各号に掲げる破産債権については、それぞれ当該各号に定める決定が確定した日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
一 第二百五十三条第一項各号に掲げる請求権 免責許可の申立てについての決定
二 前号に掲げる請求権以外の破産債権 免責許可の申立てを却下した決定又は免責不許可の決定

(免責についての調査及び報告)
第二百五十条 裁判所は、破産管財人に、第二百五十二条第一項各号に掲げる事由の有無又は同条第二項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができる。
2 破産者は、前項に規定する事項について裁判所が行う調査又は同項の規定により破産管財人が行う調査に協力しなければならない。

(免責についての意見申述)
第二百五十一条 裁判所は、免責許可の申立てがあったときは、破産手続開始の決定があった時以後、破産者につき免責許可の決定をすることの当否について、破産管財人及び破産債権者(第二百五十三条第一項各号に掲げる請求権を有する者を除く。次項、次条第三項及び第二百五十四条において同じ。)が裁判所に対し意見を述べることができる期間を定めなければならない。
2 裁判所は、前項の期間を定める決定をしたときは、その期間を公告し、かつ、破産管財人及び知れている破産債権者にその期間を通知しなければならない。
3 第一項の期間は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して一月以上でなければならない。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
3 裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
4 裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
7 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。

(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七 罰金等の請求権
2 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
3 免責許可の決定が確定した場合において、破産債権者表があるときは、裁判所書記官は、これに免責許可の決定が確定した旨を記載しなければならない。
4 第一項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

(免責取消しの決定)
第二百五十四条 第二百六十五条の罪について破産者に対する有罪の判決が確定したときは、裁判所は、破産債権者の申立てにより又は職権で、免責取消しの決定をすることができる。破産者の不正の方法によって免責許可の決定がされた場合において、破産債権者が当該免責許可の決定があった後一年以内に免責取消しの申立てをしたときも、同様とする。
2 裁判所は、免責取消しの決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び申立人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
3 第一項の申立てについての裁判及び職権による免責取消しの決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 免責取消しの決定が確定したときは、免責許可の決定は、その効力を失う。
6 免責取消しの決定が確定した場合において、免責許可の決定の確定後免責取消しの決定が確定するまでの間に生じた原因に基づいて破産者に対する債権を有するに至った者があるときは、その者は、新たな破産手続において、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
7 前条第三項の規定は、免責取消しの決定が確定した場合について準用する。

(復権)
第二百五十五条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
二 第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。
三 再生計画認可の決定が確定したとき。
四 破産者が、破産手続開始の決定後、第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。
2 前項の規定による復権の効果は、人の資格に関する法令の定めるところによる。
3 免責取消しの決定又は再生計画取消しの決定が確定したときは、第一項第一号又は第三号の規定による復権は、将来に向かってその効力を失う。

(復権の決定)
第二百五十六条 破産者が弁済その他の方法により破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れたときは、破産裁判所は、破産者の申立てにより、復権の決定をしなければならない。
2 裁判所は、前項の申立てがあったときは、その旨を公告しなければならない。
3 破産債権者は、前項の規定による公告が効力を生じた日から起算して三月以内に、裁判所に対し、第一項の申立てについて意見を述べることができる。
4 裁判所は、第一項の申立てについての裁判をしたときは、その裁判書を破産者に、その主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

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