負債総額 3,300万円
東京
従業員: 4名
債権者: 28社
個人破産(結果:免責許可)
解決までのスケジュール
受任~申立
4日
申立~終了
6ヶ月
受任4日の超スピード破産申立
真夏のある日の夕方、社長(70代前半)と奥様と長女(経理担当)の3人が、前日予約のうえで法律相談にいらっしゃいました。「ここ1年ほど社長の体調が優れず回復見込みもありません。このままでは銀行からの借入金(リスケ中)が不可能なので破産を決断しました。」とのことでした。事業内容は食肉卸売業で、つまり取扱商品が腐敗しやすい食肉です。
「今日こちらに来る前に売掛金の入金があったので、全て引き出してきました。」と、現金460万円をそのまま持参していらっしゃいました。「従業員の給料と解雇予告手当(※即日解雇で1ヶ月分)はすべて支給済みで、その残りなので、全て破産の弁護士費用(と管財人への引継予納金)として使ってもらっても大丈夫です。」とのことでした。
「ただ、会社に今まだ残って待っている従業員1人が、退職金が出ない理由が知りたい。法律事務所に行くなら、どうしても弁護士の説明を直に聞きたいと言い張っていまして…。」「なるほどですね。」。
ご来所から約2時間、踏み込んで事情を伺い、スケジュール画像をもとに破産手続きについてご説明し、正式に依頼を受けて(書面で委任契約の締結)、従業員への説明対応をするために3人とともに会社に向かいました。
会社近くまで来た段階で社長が「あれ?シャッター開いてる?」と不思議がっていました。会社の中に入ると、「あいつ(従業員)いないなぁ。あっ!? 冷蔵庫と冷凍庫の中の商品がない!」と。
困惑顔でしばらく黙り込んでいた社長に「ここにどれくらいの商品があったのですか?」と聞くと、経理担当の長女が「60〜70%くらいです。いつもの取引先4社から直近1週間の間に仕入れたものです。たぶんですけど、その4社が来て商品を持って帰ったのでしょうね…。あっ、ここに4社の伝票や納品書の写しが置いてあります。」とのことでしたので、私は「今回の破産のことは3人以外ではその従業員しか知らなかったのですか?」と聞くと、「ええ…。それに、その従業員は最古参で4社の担当者とは顔馴染みです…。」と。
(後に確認したところ、全て予想した通りであったと判明しました。なお、その従業員は、破産手続きにおいて破産管財人が申請した未払賃金立替払制度によって一定額の退職金を支給されました。)
3人にはその場でいくつかの確認事項について質問し、(裁判所に提出する破産書類の作成・収集の説明のために)翌日の来所時間を決めてから会社を出ました。
受任(初回法律相談時)から4日後、少しだけ残され食肉が腐敗しないように、また、会社の早急な退去を求める大家さん(※敷金保証金なしの賃借)からの要請のために、(引継予納金が十分であったことから)破産を申し立てました。破産手続きは、会社撤去業務と未払賃金立替払制度(退職金)の申請のため6ヵ月(債権者集会2回)かかりましたが、無事に免責許可も得て、終了しました。
<在庫商品と動産先取特権|納入商品の取戻し・引き揚げ|会社破産.com>
ところで、本件は、弁護士が何もしていない段階で、納入業者(債権者)が「動産売買先取特権」を行使して商品を取り戻した(引き揚げた)事案ですが、仮に、受任した弁護士が会社に到着後に、何らかの方法で破産を知った納入業者(債権者)たちが会社に押し寄せた場合、弁護士としてはどう対応するのか?についてですが、「引き揚げ(取り戻し)を認めない」のが通常です。
この、弁護士(破産申立代理人)の実務・現場における通常の対応については、「え?なぜ?動産売買先取特権があるのなら引き揚げ(取り戻し)を認めて返品しても問題ないのでは?むしろ引き揚げ(取り戻し)を認めない方が問題なのでは?」と思われるかもしれません。その疑問は正しいです。
しかし、実際には、弁護士(破産申立代理人)としては「後で破産管財人からクレームがくる可能性がある」ことから、やはり「引き揚げ(返品)を認めない」ことが多いです。
この背景には、例えば「破産管財人が動産売買先取特権の対象となる商品を売却して、その代金を破産財団に組み入れても(全ての債権者の利益に資するので)不法行為にはならない」とした裁判例(名古屋地判 昭和61年11月17日 判タ627号210頁)があります。
そこで、弁護士としては「返品してしまっては破産管財人からクレームが…。」という心境になってしまうのです。
もちろん、「破産申立代理人が納入業者に返品する」ことと上記裁判例は、実は両立します。「破産申立の前に破産申立代理人が納入業者に返品してもよいけれど、返品されなかった商品を破産管財人が売却して同代金を破産財団に組み入れても問題はない」という論理です。
(なお、実務では、破産申立前には破産申立代理人弁護士によって返品が拒否された商品について、破産手続中において、破産管財人が(債権者[納入業者]や同代理人弁護士からの)動産先取特権の主張に応じて商品を返品することもあります。)
しかし、論理的に両立しようがしまいが、実際に「納入業者に商品を返品した破産申立代理人が、彼に破産申立をした破産手続中に、破産管財人から損害賠償請求訴訟を提起された」事例があります。
結論としては、裁判所は原告(破産管財人)の請求を認めませんでした。(つまり、被告たる破産申立代理人弁護士は損害賠償義務を負わずに済みました。)(令和3年8月18日徳島地裁判決 金融・商事判例 1634号20頁)
もっとも、これは「判例=最高裁の判決」ではなく「裁判例=地裁・高裁などの判決」ですし、また、事実関係が違えば判断も異なることはありえます。ですので、この裁判例をもって「だから破産申立代理人は返品しても問題はない」とまで言い切れないのです。
<ケースの分類・構造化(脳トレ用)>
①破産申立代理人が返品した。後に破産管財人もそれを問題にしなかった。
②破産申立代理人が返品した。後に破産管財人はそれを問題にした(損害賠償請求など)。
③破産申立代理人が返品しなかった。後に破産管財人が返品した。
④破産申立代理人が返品しなかった。後に破産管財人は返品せずに売却して代金を破産財団に組み入れた。
(また、それぞれのケースにおいて、「どの段階で(破産申立の前・後)」「納入業者(同代理人弁護士)が動産売買先取特権を主張したか、または、しなかったか」も絡みます。さらに、「腐敗しやすい生鮮食品かそうでないか、非常に高額(ゆえに窃盗防止のために警備員が必要)かそうでないか」など商品の特質も関係してきます。)
※「破産申立代理人」と「破産管財人」の違いについては、「破産管財人とは何をする人ですか?」 をご参照ください。さらに専門的説明については「破産管財人とは具体的に何をする人ですか?」をご参照ください。
※動産売買先取特権:商品を売ったが代金が支払われない場合、法律の規定により、その商品やその転売代金から他の債権者より優先的に代金を回収できる権利(民法第303条、同311条5号)。
(売主が商品を売却した際、代金の支払いを担保するために、その商品に対して自動的に付与される法定の優先弁済権。契約なしで成立する法定担保物権。取引先が倒産した際、一般債権者よりも優先される。)
※現地(会社)入りした弁護士がいるところで、激昂 [感情が激しく高ぶって怒りを抑えきれない状態] した多くの債権者が押し寄せた場合は、けっこうな修羅場になります。おまけに、「取り戻しを認めない」場合に、納入業者(債権者)の代理人弁護士から電話がかかってきて「どうして認めないのですか!」と主張された場合には、なかなか困った事態になります。
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腐敗しやすい食肉を扱っていたことから、公衆衛生上のリスク回避のため、緊急で破産申立をした事例です。