負債総額 9,700万円
東京
従業員: 8名
債権者: 47社
何も無し
解決までのスケジュール
受任~申立
1週間
申立~終了
0日
破産申立を取下げ(破産法29条)
100%株主(一人株主)かつ代表取締役(前代表)から「健全な財務状況」との説明のうえで会社の代表を引き継いだ同社従業員(現代表)が、引継ぎ後に「説明のなかった多額の借入金(9,700万円)がある」ことが判明して、同僚従業員2人と一緒に(3人で)法律相談に来所されました。
「返済は絶対に不可能というほとではないですが、ぎりぎり切り詰めても完済までかるく10年以上はかかります。なによりも聞いていた説明と全く違う状況なので破産申立をしたいです。銀行の連帯保証人として私個人の署名捺印をする前の現時点で。私の代表取締役の辞任が認められなかったので、もう破産しかないと思いまして。」とのことでした。
※「代表取締役は任意に辞任できるのでは?」と思われるかもしれません。その通りでして、原則として、代表取締役の辞任は会社へ辞任届を提出することで辞任が可能です。しかし、例外的に、「唯一の代表取締役であり、後任者がいない場合」には、「権利義務代表取締役」として職務を継続する必要があります(会社法第351条1項)。この例外規定を悪用されて辞任できない状況でした。
「うちは優良会社だったんです、以前は。2年前に前々代表が亡くなり、妹さん(前代表)が継いだのですが、そのころから経営コンサルを名乗る怪しげな男が出入りし始めました。そして、以前の借入金を返済完了した直後に、事業拡大とかの理由で新たに借り入れをしたようなんです。でも事業拡大なんてしていないんです。」「つまり、借入金の大部分が消えてしまったということですね。」「はい、そうとしか考えられません。前社長は、通帳も代表印も銀行印も、後日渡すと言いながら、何度も何度も要求してきたのですが渡してくれないのです。なので、直近の売掛金だけは、取引先に事情を説明して、領収書に念書まで書いて現金でもらいました。従業員全員の給料分と解雇予告手当分は確保済みで、残りで破産申立費用をなんとかまかなえます。」
怒りと不安がないまぜ状態の社長から、前代表と「(自称)経営コンサル」の人間性など詳細事情を伺いつつ、直近の決算書コピーをぱらぱら見ていた私は内心で(「ん?仮払金が多すぎ?ポッケナイナイ(「横領・着服」)か迂回融資(「とばし」)か…。」)と。
直ちに依頼を受けてほしいとのご要望でしたが、いかせん会社代表印は前社長から引渡しを拒否されたままだったので、その場で「会社 実印 至急」で検索してネット注文してもらい、翌々日の午前に届いたので、すぐにそれをもって再び来所していただきました。
その場で正式に依頼を受け(書面で委任契約を締結)、破産書類に必要な「記入書類」と「収集書類」の説明をして、その後に提出いただいて何度かメールで修正・追加などやりとりをして、受任から1週間で破産申立をしました。
東京地裁の民事20部(倒産部)の受付で、破産申立書類一式と(それらに属さない独立した書類として)メモ書き的な報告書を別添して提出しました。
(これは、仮に「破産書類の一部」として上申書・報告書を添付した場合、破産申立受理後に閲覧謄写が可能となるため、名誉毀損だなんだと難癖をつけられたりすると厄介だと用心したからです。つまり、いわゆる「オフレコ」扱いにしたのです。)
この報告書を読んだ裁判所書記官から諸所確認のため「ちょっとこちらへ。」と奥の会議室に呼ばれ、そこで現状況や背景事情を説明しました。裁判所書記官が「しばらくお待ちください。」と部屋から出ていき、数分して裁判官と一緒に戻ってこられました。裁判官から数点だけ質問を受けて回答した結果、裁判官が「なるほどですねぇ。うーん、では、念のために破産手続開始決定を2週間ほど遅らせましょうか?」との有難い提案をいただいた。
この「破産手続開始決定を2週間ほど遅らせ」るというのは、「破産申立ての取下げ」を想定したものです。
※「破産申立ての取下げ」は、裁判所による破産手続開始決定がなされる前であれば可能ですが、決定後は原則として取下げができません(破産法29条)。
※東京地方裁判所では、(緊急案件などを除いて、原則として)「破産申立日の翌週水曜17時」に破産手続開始決定をします。
※東京法務局で法人の代表者変更登記を最速で行う場合、オンライン申請(登記ねっと)を利用すれば完了まで約3日〜1週間程度です。
明に暗に共有されたのは次のような事実と推測です。
・前代表は自身の連帯保証債務を免れるために、現代表にそれを押し付けたかった。(経営コンサル [自称] の助言?指示?)
・しかし、現代表は、連帯保証人の署名・押印をする前に、あろうことか破産申立をしてしまった。(前代表にとっては破産申立など完全に想定外だった)。
・破産申立後に破産手続開始決定が出てしまうと、破産管財人が選任されてしまう。破産管財人には「第三者」(前代表)に対しても広範な調査権と強制的手段が法律上与えられている。よって、通帳の引渡しを拒否して持ったままの前代表は徹底的に調査されてしまう。そうすると、表に出せなかったこと(横領?迂回融資?)まで全て発覚してしまい、それらは当然「損害賠償請求」や「否認」の対象となるし、最悪の場合は「刑事告発」の可能性まである。(かといって通帳には全入出金履歴が残っているため提出することは絶対にできない。)
・これら全てを回避するためには、「破産申立後、(裁判所が)破産手続開始決定をするまでの間」に、破産申立てを取り下げるしかない。そのためには、 100%株主(一人株主)である自分が、株主総会を形式的にでも開催し、現代表を解任して自分を代表に選任(再任)する必要がある。とても簡単だ。
その日の夕方、現代表が前代表に電話をして、破産申立をした旨を伝えました。その10日後、前代表は(株主総会を開催して現代表を解任し、自分を代表に選任したうえで)破産申立の取下げをしたと、裁判所から電話がありました。
なお、後日談ですが、同社の元従業員7人は退社して自分たちで別会社を設立し、取引先などを引き継いで事業を継続していますと弾んだ声で電話がありました。
※破産手続開始の申立ては、自己破産・隼自己破産・債権者破産のいずれの場合でも、破産手続開始の決定があるまでは取り下げることができる(破産法29条)。
※裁判所は司法機関であって、警察や検察などの法執行機関ではないため、自ら犯罪を捜査・処罰する方向で動くことはありません。中立です。(参照:不告不理の原則)
※破産管財人の第三者に対する調査権(代表者以外の第三者が通帳を提出しない場合)
・裁判所による引渡命令(破産法156条1項):破産者の財産を所持する第三者に対し、裁判所はその物件を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができます。これに従わない場合は強制執行の対象となります。
・説明義務(破産法40条):説明義務の履行を求めることができます。
・照会権限(破産法83条5項):公務所または公私の団体(銀行などの金融機関)に対し、必要な事項の報告を求めることができます。 (実務上、銀行はこの規定に基づき、本人(代表者)の同意なく取引明細を開示します。)
・郵便物等の転送(破産法81条1項)
・否認権(破産法160条〜176条):債務者が破産前に財産を不当に減少させたり、特定の債権者にだけ返済したりする行為を無効にし、流出した財産を取り戻す権利です。
・詐欺破産罪(破産法265条1項1号):債権者を害する目的で、財産を隠匿・損壊・価値減少行為をした者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられます。(管財人が刑事告発できます。)
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破産申立の後、代表取締役が株主総会によって解任されたことから、破産申立を取下げた特殊事例です。