破産管財人とは具体的に何をする人ですか?

破産管財人

破産管財人は、破産手続開始の決定と同時に裁判所によって選任される、破産手続の中心的役割を担う機関です(破産法31条1項柱書、74条1項)。
破産手続の目的の一つは、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算」(破1条)、つまり破産債権者に対する公平な配当の実施です。破産管財人は、その目的を実現するために、破産者に代わって破産財団の管理処分権を有し、破産財団の管理・換価を行い、配当の基礎となる財団を形成します。
同時に、破産手続のもう一つの目的は、「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」ことであり、破産者が個人の場合には、破産者の経済的再生にも注意を払う必要があります。
このように、破産管財人は、幅広い権限を有し、具体的な職務執行も広汎な自由裁量に委ねられている一方で、職務の執行に当たり、善管注意義務を負うだけでなく、全ての利害関係人に対し公正かつ中立でなければなりません。

破産管財人の義務

(1) 善管注意義務

破産管財人は善良な管理者の注意をもってその職務を行う義務があります(破85条1項)。

(2) 公正中立義務・忠実義務

破産管財人は、全ての利害関係人に対し公正中立でなければなりません。

(3) 報告義務

破産管財人は、破産手続開始に至った事情・破産者及び破産財団に関する経過及び現状・役員の財産に対する保全処分又は役員の責任査定決定を必要とする事情の有無・その他破産手続に関して必要な事項を記載した報告書を裁判所に提出し(破157条1項各号)、財産状況報告集会において、その要旨を報告しなければなりません(破158条)。

破産管財人の職務

(1)選任直後の職務

破産管財人は、就任後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手し(破79 条)、破産財団に属する財産につき破産手続開始時の価額を評定しなければならない(破153条1項)とされています。
このために、破産管財人は、申立代理人・破産者などと打合せをし、破産財団に関する帳簿・書類その他の物件を検査することができ(破83条、破規26条2項)、また、裁判所が行った郵便物等の転送嘱託により配達された郵便物等の開披を行って内容を確認することができます(破81条、82条)。

(2)破産財団の管理・換価に関する職務

破産手続開始の決定があった場合、破産者が破産手続開始の時に有してい た一切の財産は、破産財団に属するものとされ(破34条1項)、同時に、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、破産管財人に専属するものとされます(破78条1項)。

(3)破産債権の確定に関する職務

(4)債権者集会に関する職務

(5)配当・廃止等に関する職務

債権調査と破産財団に属する財産の換価が終了し、破産財団をもって破産 手続の費用の支弁と財団債権の弁済を行い、更に剰余が出れば、破産管財人 は、配当を行います。また、破産手続開始の決定後破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するときは、破産管財人は、異時廃止の申立てをします(破217条1項)。

(6)免責に関する職務

破産管財人は、免責不許可事由の有無及び裁量免責の判断に当たって考慮すべき事項について調査、報告を行います(破250条1項)。

破産管財人の報酬

破産管財人は、職務執行の対価として、裁判所が定める報酬を受ける権利を有します(破87条1項)。また、裁判所は、破産管財人の報酬を定める際、その職務と責任にふさわしい額を定める必要があります(破規27条)。

条文

(破産手続開始の決定と同時に定めるべき事項等)
第三十一条 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、一人又は数人の破産管財人を選任し、かつ、次に掲げる事項を定めなければならない。

(破産手続開始の公告等)
第三十二条 裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない。
3 次に掲げる者には、前二項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。
一 破産管財人、破産者及び知れている破産債権者

(破産管財人の選任)
第七十四条 破産管財人は、裁判所が選任する。
2 法人は、破産管財人となることができる。

(破産管財人に対する監督等)
第七十五条 破産管財人は、裁判所が監督する。
2 裁判所は、破産管財人が破産財団に属する財産の管理及び処分を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができる。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならない。

(数人の破産管財人の職務執行)
第七十六条 破産管財人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。
2 破産管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。

(破産管財人代理)
第七十七条 破産管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の破産管財人代理を選任することができる。
2 前項の破産管財人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。

(破産管財人の権限)
第七十八条 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。
2 破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
一 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却
二 鉱業権、漁業権、公共施設等運営権、樹木採取権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権又は著作隣接権の任意売却
三 営業又は事業の譲渡
四 商品の一括売却
五 借財
六 第二百三十八条第二項の規定による相続の放棄の承認、第二百四十三条において準用する同項の規定による包括遺贈の放棄の承認又は第二百四十四条第一項の規定による特定遺贈の放棄
七 動産の任意売却
八 債権又は有価証券の譲渡
九 第五十三条第一項の規定による履行の請求
十 訴えの提起
十一 和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)
十二 権利の放棄
十三 財団債権、取戻権又は別除権の承認
十四 別除権の目的である財産の受戻し
十五 その他裁判所の指定する行為
3 前項の規定にかかわらず、同項第七号から第十四号までに掲げる行為については、次に掲げる場合には、同項の許可を要しない。
一 最高裁判所規則で定める額以下の価額を有するものに関するとき。
二 前号に掲げるもののほか、裁判所が前項の許可を要しないものとしたものに関するとき。
4 裁判所は、第二項第三号の規定により営業又は事業の譲渡につき同項の許可をする場合には、労働組合等の意見を聴かなければならない。
5 第二項の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
6 破産管財人は、第二項各号に掲げる行為をしようとするときは、遅滞を生ずるおそれのある場合又は第三項各号に掲げる場合を除き、破産者の意見を聴かなければならない。

(破産財団の管理)
第七十九条 破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない。

(当事者適格)
第八十条 破産財団に関する訴えについては、破産管財人を原告又は被告とする。

(郵便物等の管理)
第八十一条 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条及び第百十八条第五項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 裁判所は、破産者の申立てにより又は職権で、破産管財人の意見を聴いて、前項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。
3 破産手続が終了したときは、裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による決定及び同項の申立てを却下する裁判に対しては、破産者又は破産管財人は、即時抗告をすることができる。
5 第一項の規定による決定に対する前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
第八十二条 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる。

(破産管財人による調査等)
第八十三条 破産管財人は、第四十条第一項各号に掲げる者及び同条第二項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社等(次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める法人をいう。次項において同じ。)に対して、その業務及び財産の状況につき説明を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
一 破産者が株式会社である場合 破産者の子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)
二 破産者が株式会社以外のものである場合 破産者が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社
3 破産者(株式会社以外のものに限る。以下この項において同じ。)の子会社等又は破産者及びその子会社等が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、前項の規定の適用については、当該他の株式会社を当該破産者の子会社等とみなす。

(破産管財人の職務の執行の確保)
第八十四条 破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができる。

(破産管財人の注意義務)
第八十五条 破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
2 破産管財人が前項の注意を怠ったときは、その破産管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。

(破産管財人の情報提供努力義務)
第八十六条 破産管財人は、破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権を有する者に対し、破産手続に参加するのに必要な情報を提供するよう努めなければならない。

(破産管財人の報酬等)
第八十七条 破産管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
2 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 前二項の規定は、破産管財人代理について準用する。

(破産管財人の任務終了の場合の報告義務等)
第八十八条 破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人は、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出しなければならない。
2 前項の場合において、破産管財人が欠けたときは、同項の計算の報告書は、同項の規定にかかわらず、後任の破産管財人が提出しなければならない。
3 第一項又は前項の場合には、第一項の破産管財人又は前項の後任の破産管財人は、破産管財人の任務終了による債権者集会への計算の報告を目的として第百三十五条第一項本文の申立てをしなければならない。
4 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第二項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の申立てにより招集される債権者集会の期日において、第一項又は第二項の計算について異議を述べることができる。
5 前項の債権者集会の期日と第一項又は第二項の規定による計算の報告書の提出日との間には、三日以上の期間を置かなければならない。
6 第四項の債権者集会の期日において同項の異議がなかった場合には、第一項又は第二項の計算は、承認されたものとみなす。

第八十九条 前条第一項又は第二項の場合には、同条第一項の破産管財人又は同条第二項の後任の破産管財人は、同条第三項の申立てに代えて、書面による計算の報告をする旨の申立てを裁判所にすることができる。
2 裁判所は、前項の規定による申立てがあり、かつ、前条第一項又は第二項の規定による計算の報告書の提出があったときは、その提出があった旨及びその計算に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならない。この場合においては、その期間は、一月を下ることができない。
3 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(第一項の後任の破産管財人を除く。)は、前項の期間内に前条第一項又は第二項の計算について異議を述べることができる。
4 第二項の期間内に前項の異議がなかった場合には、前条第一項又は第二項の計算は、承認されたものとみなす。

(任務終了の場合の財産の管理)
第九十条 破産管財人の任務が終了した場合において、急迫の事情があるときは、破産管財人又はその承継人は、後任の破産管財人又は破産者が財産を管理することができるに至るまで必要な処分をしなければならない。
2 破産手続開始の決定の取消し又は破産手続廃止の決定が確定した場合には、破産管財人は、財団債権を弁済しなければならない。ただし、その存否又は額について争いのある財団債権については、その債権を有する者のために供託しなければならない。

(裁判所への報告)
第百五十七条 破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、次に掲げる事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない。
一 破産手続開始に至った事情
二 破産者及び破産財団に関する経過及び現状
三 第百七十七条第一項の規定による保全処分又は第百七十八条第一項に規定する役員責任査定決定を必要とする事情の有無
四 その他破産手続に関し必要な事項
2 破産管財人は、前項の規定によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団に属する財産の管理及び処分の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない。

(財産状況報告集会への報告)
第百五十八条 財産状況報告集会においては、破産管財人は、前条第一項各号に掲げる事項の要旨を報告しなければならない。

(債権者集会への報告)
第百五十九条 破産管財人は、債権者集会がその決議で定めるところにより、破産財団の状況を債権者集会に報告しなければならない。

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